ライフジャケットの着用により水の中の活動を楽しむことができた

 09, 2017 05:00
 言葉の理解が困難な障がいのある人とのコミュニケーションギャップについて、ずっと取り上げてきた。
 支援者もいろんな試みをして、失敗や壁にぶつかる。
 その試みが本人から拒否されたり、パニックになったりすると困ってしまう。
 支援者も不安に思いながら対応する。
 そういう時、第三者、特に別の視点からアドバイスできる専門家から意見を聴くと有効である。
 本事例は、理学療法士のアドバイスが功を奏した。
 本事例は今まで何度か取り上げているものだ。

 本論文の紹介は第238回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

6 コミュニケーションが広がらない

6-B 誤解が生じる

6-B-5 伝え方が悪い

C-2 情報を構造化する

【事例】

T-6 意図を正確に読み取ることにより本人の発信意欲が増す

 対象は重度の知的障害を伴う脳性麻痺の女性21歳のUさん。
 Uさんは,座位は保持できているが,移動手段を持たない。
 言葉の理解は困難で,具体的な表出手段を持たない方である。重症心身障害者のデイサービスに日中通っている。

 デイサービスでは定期的に温水プールを利用している。
 また温水プールが嫌いな人のために,他の活動も用意されていた。
 言葉でのコミュニケーションが難しいUさん達には,水着を見せる,着替えをする,プールサイドまで行くなど,何段階かで利用者の方に活動を予告し,「拒否」のサインがでるようであれば,別の活動に参加してもらうようにしていた。

 Uさんは,どの段階でも「拒否」は出ない。
 しかし,毎回プールに入って10分もしないうちに,大声で泣き叫び出してしまうのだ。
 デイサービスの職員は,「Uさんは温水プールが嫌いだが,事前の予告の意味が分からずに「拒否」することが出来ないのだ」と考えていた。
 また,毎回泣き叫んでしまうので,このまま温水プールの活動を続けるかどうか悩んでいた。

 ある日温水プールに入った時のこと,たまたま居合わせた理学療法士がUさんにライフジャケットの着用を勧めた。
 もっと安定して水の中での活動が楽しめるだろうという配慮からである。
 その日Uさんは,泣き叫ぶことなど全くなくとても楽しそうだった。

 Uさんはプールの活動が嫌いなのではなく,不安定な姿勢にされる状態が嫌だったのだ。
 それ以来Uさんは毎回ライフジャケットを着用し,温水プールの活動に参加している。

(つづく)

【引用終わり】



 プールにおける水の中の活動を楽しいものに転換できた。
 それがライフジャケットの着用である。
 支援者だけでは思いつかなかった。
 理学療法士のアドバイスがあればこそである。
 そういう意味で障がい者支援において、チームアプローチは重要なのだ。  
  
  (ケー)
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