シンボルシートの利用により本人の意思伝達が可能になる

 26, 2017 05:04
 次の事例は、重複障害のある生徒に対するシンボルシートを利用した発信の支援である。
 fくんは、肢体不自由、高度難聴、知的障害の重複障害がある。
 聞こえが困難なため、話ことばの理解ができない。
 こうした生徒に対して、小学部3年より「写真」によるコミュニケーションを利用してきた。
 「写真」の提示でYes/Noの選択ができるようになってきた。
 また、好きな新幹線みたいと、写真によって要求することができるようになった。
 徐々にコミュニケーションもスムーズになってきた。
 今、さらにより詳細なコミュニケーションができる手立てを試みている。

 本論文の紹介は第224回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

6 コミュニケーションが広がらない

6-B 誤解が生じる

6-B-4 言葉が不明瞭

A コミュニケーション(発信)を支える技法(AAC技法)

A-5 選択の技法

【事例】

T-13 シンボルシートの利用により本人の意思伝達が可能になる

 対象はfくん。
 肢体不自由児の養護学校に通う中学部の1年生。
 脳性まひ(痙直型四肢まひ),高度難聴,知的障害とたくさんの障害を重複している。
 安定した座位保持装置に座れば,上肢を使用することが可能で,本をめくったり,複数のスイッチのついた玩具で遊んだりすることが出来る。

 補聴器はつけているが,話ことばの理解は全くない。
 しかし状況の理解はよく,小学部3年の時から次の活動の見通しをつけてもらうための「写真」を理解の補助手段として使用し始めた。

 fくんからの意図的なコミュニケーションは,予告の「写真」を見せると首を振って「拒否」するような場面から現れた。
 そのうち好きなビデオをかけてもらうために母親にさし出すエピソードや,大好きな新幹線を見に行きたいために,新幹線が書いてある絵本を父親にさし出すような場面が6年生頃から確認された。

 もう少し詳細にfくんに伝え,彼からの自発的なコミュニケーションを補償するために中学部の1年になってから積極的にシンボル(PCS:Picture Communication Symbol)を導入するようになった。
 まず理解面の補助手段として家庭での日課を伝えるために使われた。
 またより細かな内容を伝えるため,理解補助用にシンボルシートを作成した。
 シンボルの理解も進んでいるので,fくんが発信するためのシンボルシートを続いて作成した。

 最近では,退屈な休みの日にシンボルシートの「○○百貨店」のロゴを示して「行きたい」と要求するようになった。
 彼の目的は買い物ではなく,百貨店の下にあるバスターミナルである。
 乗り物が大好きなfくんは,バスターミナルもとても好きな場所だ。
 「○○百貨店」の1階は大きなバスターミナルであることをよく知っているのだ。

 少しずつではあるが,fくんにとってシンボルシートは,理解と発信において重要なものになりつつある。

(つづく)

【引用終わり】



 上記の事例に導入したPCSは、ピクチャーコミュケーションシンボルと呼ばれるものだ。
 ボードメーカーが開発した。
 4800個以上のシンボルライブラリーを収録したソフトウェアである。
 高品質の合成音声による読み上げや録音、多彩なアニメーションやアクションなどの機能を備えている。
 操作も簡単にできている。   
 
  (ケー)
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