身振りを使えるようになった

 01, 2017 05:00
 以下は、身振りそのものはできても、コミュニケーション手段として機能的に身振りを使わないZちゃんが、身振りを使えるようになった。
 そうした事例について述べている。
 実際は、クレーンと直接行動で要求していて、身振りによるやり取りをしない。
 身振りをやり取りで使うことがZちゃんは身につけることができていなかった。
 聴覚障がい・自閉症が重複しているZちゃんである。
 身振り、シンボル等の理解ができて1年以上がたっていた。
 それでも、自らの要求を身振りを使うことがなかった。
 発信といった積極的な手立てを理解することができずにいた。
 クレーンや直接行動に依存していたのである。 

 本論文の紹介は第200回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

6 コミュニケーションが広がらない

6-B 誤解が生じる

6-B-4 言葉が不明瞭

A コミュニケーション(発信)を支える技法(AAC技法)

A-1 ノンテク・コミュニケーション技法を利用する

【事例】

T-7 機能的に使える身振りを教えることのより発信手段を与える

 対象は聴覚障害を伴う自閉症の女の子,5歳のZちゃん。地元の幼稚園に通いながら,幾つかの相談機関に通っている。
 補聴はされていて,声に振り返ることは出来るが,話し言葉の理解は難しい。
 理解と表出の代替手段として,身振りと写真・シンボルを用いていた。

 使用して1年,それらの手段は次の活動の予告として有効になっていた。
 しかし,表現手段はクレーンと物を渡しての要求であり,身振りは絵カードを見ると自発的に出来る50個を超えていたにも関わらず,コミュニケーション手段としては使えていなかった。

 ある日,いつもの様にお気に入りの「ガイコツ」の玩具を持って,ZちゃんはSTの所に訓練に来た。
 STは試しに,その「ガイコツ」を取り上げてみた。
 始めのうちは力ずくで取り返そうとしていたが,STはなかなか返してくれそうにないのでZちゃんは泣きそうになった。
 STのことをよく見ていたので,「ガイコツ(両手の人指し指と中指を合わせて肋骨の形を表す)・ちょうだい」の身振りを促してみると,Zちゃんは模倣した。
 そこで,玩具をZちゃんに返した。しばらくして,また「玩具を取り上げる」→「身振りを模倣させる」→「返す」を何度か繰り返した。
 始めは嫌がっていたZちゃんも,やり取りそのものが楽しくなり,身振りの意味も理解出来たようだった。

 「ガイコツ」のやりとりはお母さんとの遊びにもなり,「ちょうだい」はおやつの場面などで使えるようになった。
 現在は他の身振りも機能的に使える生活場面を考えているところである。

(つづく)

【引用終わり】



 以上のように、「ちょうだい」という要求の身振りを学んでから、次々と生活場面で身振りを発するようになった。
 そのきっかけは、大好きな「ガイコツ」の玩具のやり取りから始まっている。
 本人にとって、肌身離さず持っている大事な物を使ったのが良かった。
 大事な物を欲しいという状況にしたのが成功に導いた。
 本人にとって、ある種の不足した状況におくことで、身振りを自発すると、要求がかなえられると学んだのである。
 こうしたことも、本人が無理ない程度で実施すればうまくいく事例である。

  (ケー)
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