VOCAの提供により本人の意思伝達が可能になる

 17, 2017 05:14
 次に引用した事例は、VOCA(Voice Output Communication Aid)を利用して、機能的な要求語を使用することができるようになった。 bくんは、エコラリア(反響言語)だけでうまくコミュニケーションができていなかった。
 「命令遊び」という活動を通じて、VOCAを使うことで、「ココココ,チテ(こちょこちょして)」という要求語を発した。
 それをきっかけに、話し言葉が増えてきているという。

 本論文の紹介は第157回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

5 勝手に行動する(自己管理出来ない)

5-3 尋ねたり援助を求めることが出来ないので直接行動で訴える

A-3 代替手段(ハイテク・コミュニケーションエイド)を提供する

T-9 VOCAの提供により本人の意思伝達が可能になる

 対象はbくん。
 知的障害を伴う自閉症,4歳の男児である。
 地域の保育所に通いながら,言語訓練を受けている。
 理解面は単語レベルで,簡単な指示に従うことが出来た。
 発語もいくつか確認されていたが,ほとんどがエコラリア(反響言語)でコミュニケーション上に使用出来ているものはなかった。
 言語訓練の場面では,bくんの理解面の向上に加えて,他者に発信する楽しさを経験してもらおうと「命令遊び」をしていた。

 「命令遊び」とは,VOCAを用いて相手に命令し,その通りに大人が動くという活動である。
 音声を使う楽しさや便利さを経験してもらうことを目的に行われる。
 命令の内容や数はケースの好みや知的な能力によって決める。
 身体接触遊びの命令を好む子どももいれば,しゃぼん玉や歌など静かな活動が好きな子どももいる。
 bくんは、比較的活発な遊びが好きであったので,図A-3-aのような身体接触遊びを中心とした内容にした。

 左から,「こちょこちょして」,「手遊びして」,「ぐるぐるして」,「ボールにのせて」,「おうまさんして」。
 シンボルはPCSを使用。
 それぞれのメッセージがVOCAに登録(デジタル録音)されている。

 導入当初は,少しVOCAを押すことを促す必要があったが,すぐにその意味が分かり自分がして欲しい活動を選ぶようになり,「命令遊び」がとても気に入った様子だった。

 「命令遊び」を開始し,約2カ月たった訓練場面のことである。
 いつものように「命令遊び」をしていた時だ。
 「ボールにのせて」が終わった後に,VOCAを押しに行かず,STの前ににこにこしながらやって来て「ココココ,チテ(こちょこちょして)」と言ったのだ。
 エコラリアはあったが,コミュニケーション上での話ことばの使用がなかったbくんにとって,実質的な初語となった。
 それから半年余り,STのみならず,家族や保育士に対しても「ココココ,チテ」を連発し,言葉の便利さ,楽しさを様々な人と共有した。
 また,少しずつではあるが,話し言葉のコミュニケーション上の使用が増え始めている。

(つづく)

【引用終わり】



 VOCAを、本人の実態に即して計画的に使用することによって、機能的な言葉を発するところまで可能になった。
 本人にとって、支援者等にとっても、大きな成果である。
 これを順調に進めることができれば、コミュニケーションもスムーズなものになるはずだ。
    
  (ケー)
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