機能的に使える身振りを教える

 07, 2017 05:00
 以下に引用した事例は、「ちょうだい」の身振りを習得することができたものである。
 聴覚障がいと自閉症を併せ持つ5歳児に対する実践である。
 身振りや絵カードの理解は50個もできていた。
 しかし、自発的に発信することがなかった。
 発信手段は、クレーと実物をわたすといった直接行動だった。
 「ちょうだい」という要求行動が、自ら発信しなければならない状況をあえてつくって学習させた実践である。

 本論文の紹介は第147回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

5 勝手に行動する(自己管理出来ない)

5-3 尋ねたり援助を求めることが出来ないので直接行動で訴える

A-1 ノンテク・コミュニケーション技法を利用する

【事例】

T-7 機能的に使える身振りを教えることにより発信手段を与える

 対象は聴覚障害を伴う自閉症の女の子,5歳のZちゃん。
 地元の幼稚園に通いながら,幾つかの相談機関に通っている。
 補聴はされていて,声に振り返ることは出来るが,話し言葉の理解は難しい。
 理解と表出の代替手段として,身振りと写真・シンボルを用いていた。

 使用して1年,それらの手段は次の活動の予告として有効になっていた。
 しかし,表現手段はクレーンと物を渡しての要求であり,身振りは絵カードを見ると自発的に出来る50個を超えていたにも関わらず,コミュニケーション手段としては使えていなかった。

 ある日,いつもの様にお気に入りの「ガイコツ」の玩具を持って,ZちゃんはSTの所に訓練に来た。
 STは試しに,その「ガイコツ」を取り上げてみた。
 始めのうちは力ずくで取り返そうとしていたが,STはなかなか返してくれそうにないのでZちゃんは泣きそうになった。
 STのことをよく見ていたので,「ガイコツ(両手の人指し指と中指を合わせて肋骨の形を表す)・ちょうだい」の身振りを促してみると,Zちゃんは模倣した。
 そこで,玩具をZちゃんに返した。
 しばらくして,また「玩具を取り上げる」→「身振りを模倣させる」→「返す」を何度か繰り返した。
 始めは嫌がっていたZちゃんも,やり取りそのものが楽しくなり,身振りの意味も理解出来たようだった。

 「ガイコツ」のやりとりはお母さんとの遊びにもなり,「ちょうだい」はおやつの場面などで使えるようになった。
 現在は他の身振りも機能的に使える生活場面を考えているところである。

(つづく)

【引用終わり】



 Zちゃんにとっては、大切な「ガイコツ」を取り戻す場面に追い込まれた。
 支援者の身振りの「ちょうだい」という模倣によって、目的の「ガイコツ」を取り戻すことができた。
 それが家庭でもできるようになった。
 生活全般において、こうした発信行動を広げていったのである。
 今後は、「ちょうだい」以外の身振りの習得を目指している。 
  
  (ケー)
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