方略を教えることにより本人が指示に適切に反応できる

 04, 2016 05:00
 以下の事例は、障がいのある人の実態に即した対応がいかに重要かを示すものである。
 時間の見通しをもって農作業に取り組むことができるようにしても、やり方によっては問題が生ずるといった事例である。
 時計をどのように身につけさせるかの配慮不足が問題となってしまった。
 時計をポケットに入れての農作業は、本人には不満だった。
 本人にとって、時間の動きが見えないことは不安だった可能性もある。
 農作業にも支障なく、時計も確認しやすい対応を工夫することが大事なのだ。

 本論文の紹介は第113回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

4 指示が通らない(コミュニケーション出来ない)

4-5 指示が理解出来てもどうすべきか分からない

【事例】

T-30 方略を教えることにより本人が指示に適切に反応できる

 作業時の例である。
 対象は高等部に在籍する自閉症をもつMさんである。
 Mさんは,農耕の作業班で作業をしていた。
 見通しをもつことが出来れば,作業に集中することが出来る。
 すなわち,後どれだけの量をすれば終わるかということが分かれば取り組みやすいのである。
 しかし,農耕のような作業の場合には,作業量を示すことは困難である。
 その結果,時間を使って見通しがもてるように指導することになる。
 Mさんの場合は,幸い時計を見ることが出来るようになっていたため,時間によって作業に見通しをもつことが出来た。

 ある日の作業時のこと,Mさんは,時計を片手に持って作業をしていた。
 時間に見通しをもって作業をしていたからである。
 しかし,指導に当たっていた教員は,片手に時計を持っていた状態では作業がうまく出来ないということで,時計をポケットに入れるように指導した。
 しかし,Mさんがこれを聞き入れなかったために,しつこく指導するようになってしまい,Mさんはパニックを起こしてしまった。
 その後は作業にならなかった。

 Mさんは時間に見通しをもって作業をしたかったために時計を片手に思っていたのであり,作業をしたくないために時計を持っていたのではない。
 しかし,Mさんはどのように持つことが一番よいのかが分からなかったのではないかと考えられる。
 このような場合,時計も見ながら作業をすることが出来るように,見えるところに時計を置くように指導するとか,腕にはめて作業できるようにするなどの指示が適当であったと思われる。
 何も,時計をポケットに入れて作業しなければならないという決まりはない。

 方略を変えることで,スムースに行く場合がある。
 利用者や子どもの立場に立って,こちらの思い込みではなく方略を考えて支援していく必要がある。

(つづく)

【引用終わり】



 本人が時間を確認しやすく、作業もしやすい時計は、どんなものかさまざま試みる必要がある。
 身近にあるからこれでいいとしてしまうと、失敗することが多い。
 本人にいかに合わせるかが、支援者の腕の見せ所だ。
  
  (ケー)
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