コミュニケーションのための環境を整備する

 15, 2016 05:00
 重度重複障がいのある人には、AAC(Augmentative & Alternative Communication ・補助代替コミュニケーション)技法による支援が用いられる。
 ただ、そうした技法を適用しても、うまくいかないといったケースもある。
 その場合、何が問題か明らかにすることが必要だ。
 感覚障がいを併せもつことが多い。
 よく見えていない、よく聞こえていないといったことを考慮しなければならない。
 そうした問題に対応する支援を行うことである。
 以下には、そうした事例への対策が述べられている。
 
 本論文の紹介は第95回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

4 指示が通らない(コミュニケーション出来ない)

4-3 注意が向いていない

E-1 コミュニケーションのための環境を整備する

 感覚障害を併せもつ重複障害の場合,本人の意思を把握するために,従来のAAC技法を適用しようとしても,うまくいかない場合がある。
 例えば,スイッチを押すと大好きなオモチャが動くという場面を設定したいと考えたとする。
 その際,感覚障害がなければ,見たり,聞いたりしてオモチャの動きを楽しむことが可能である。
 しかし,視覚や聴覚にも障害があると,スイッチを押した後に何が起こったかが分からない。
 すなわち,自分の選択がどのように環境を変化させたかが分からないのである。
 したがって,選択肢や選択した結果,何が起こっているかをその人に分かりやすく提示する必要がある。

 選択肢等が分かりやすい環境を整備するためには,その人の見え方や聞こえ方を把握する必要がある。
 なぜなら,まぶしくて見えにくい人には照明を暗くしたり,サングラスを活用する必要があるが,明るさが足りなくて見えにくい人には,机上灯を用意したり,傾斜台を使って採光を工夫しなければならず,見え方に応じて環境の整え方が異なるからである。
 しかし,重度重複障害のケースでは感覚障害の実態が十分に把握出来ていない場合が多い。
 つまり,感覚障害を併せもっているにもかかわらず,その実態はあまり把握されていないのである。
 これは,感覚障害の実態を把握するための一般的な医療検査が,音声言語によるコミュニケーションを基礎にしており,重度重複障害のケースに対応しきれていないのが原因の一つだと考えられる。
 また,感覚障害の状態と環境整備の間の関係が明確にされていない場合も少なくない。
 自己決定を支援する場面では,眼疾患や視力等の感覚機能の状態そのものを知りたいのではなく,どうすれば適切な環境整備が出来るかを知りたいのである。

(つづく)

【引用終わり】



 よく見えていない、よく聞こえていない状態にある障がいについて、機能障がいそのものを明らかにすることは難しい。
 それよりそうした障がいをふまえて、より良く見えたり、聞こえたりする支援のあり方を追求する方が生産的だ。
 機能障がいを明らかにする医療検査に限界があるからである。
 それは音声言語を前提にした検査のためだ。
 無発語の重度障がい者には適切でない。
 日常生活の実情をふまえて、どうすれば見えやすい、聞こえやすい状況になるか試行錯誤することが大切である。
  
  (ケー)
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