発信の未熟な子に身振りを教える

 10, 2016 05:00
 今回も、以前紹介した事例を取り上げる。
 本人は発信行動が未熟で、身振りや写真・シンボルを用いるようにしていた。
 ただ、あくまで介助者による次の活動の予告としか機能していなかった。
 本人の理解に役立っているだけだった。
 自ら発信して要求する手立てにするところまでいってなかった。
 肌身離さず持ち歩いているお気に入りの「がいこつ」をきっかけに、身振りを発信する行動を形成した。
 以下がその事例の紹介である。

 本論文の紹介は第59回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

2-2 発信行動が未熟

A コミュニケーション(発信)を支える技法(AAC技法)

A-1 ノンテク・コミュニケーション技法を利用する

T-7 機能的に使える身振りを教えることにより発信手段を与える

 対象は聴覚障害を伴う自閉症の女の子,5歳のZちゃん。
 地元の幼稚園に通いながら,幾つかの相談機関に通っている。
 補聴はされていて,声に振り返ることは出来るが,話し言葉の理解は難しい。
 理解と表出の代替手段として,身振りと写真・シンボルを用いていた。

 使用して1年,それらの手段は次の活動の予告として有効になっていた。
 しかし,表現手段はクレーンと物を渡しての要求であり,身振りは絵カードを見ると自発的に出来る50個を超えていたにも関わらず,コミュニケーション手段としては使えていなかった。

 ある日,いつもの様にお気に入りの「ガイコツ」の玩具を持って,ZちゃんはSTの所に訓練に来た。
 STは試しに,その「ガイコツ」を取り上げてみた。
 始めのうちは力ずくで取り返そうとしていたが,STはなかなか返してくれそうにないのでZちゃんは泣きそうになった。
 STのことをよく見ていたので,「ガイコツ(両手の人指し指と中指を合わせて肋骨の形を表す)・ちょうだい」の身振りを促してみると,Zちゃんは模倣した。
 そこで,玩具をZちゃんに返した。
 しばらくして,また「玩具を取り上げる」→「身振りを模倣させる」→「返す」を何度か繰り返した。
 始めは嫌がっていたZちゃんも,やり取りそのものが楽しくなり,身振りの意味も理解出来たようだった。

 「ガイコツ」のやりとりはお母さんとの遊びにもなり,「ちょうだい」はおやつの場面などで使えるようになった。
 現在は他の身振りも機能的に使える生活場面を考えているところである。

(つづく)

【引用終わり】



 聴覚障がいと自閉症の重複障がいのある5歳児に、身振りという発信行動をいかにして身につけさせることができたか。
 本児にとって肌身離さず持ち歩く「ガイコツ」の玩具を媒介にしている。
 本児が要求したがる状況をつくって発信しなければ要求がかなえられなくあえてする。
 はじめは身振りの模倣をすれば要求をかなえる。
 そうしたことを繰り返して、自発的に身振りが発信できるようにした。
 最初は、「ガイコツ」の玩具によるやりとりだったが、おやつによる「ちょうだい」といった身振りもできるようになった。
 身振りの種類を少しずつ増やしていくことで、発信の種類も増えていくに違いない。
  
  (ケー)
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