楽しい食事にするために

 08, 2016 05:00
 重度重複障がいのある人に対する食事において、ときおり示す不快な状況がなぜなのか介助者にはわからない。  
 そのため、嫌がったりしたら食事をやめざるを得なかった。
 中途半端な形で終了させていたのだ。
 以下において、そのような事例を取り上げている。
 本事例は、このシリーズで一度紹介した。
 二度目の紹介となる。
 介助者はいつも食事介助している障がい者について、好き嫌いはないと思い込んでいた。
 そうした思い込みが本来は楽しいはずの食事を、不快なものにしていたのである。
 介助について、問題が生じているならば、介助者だけの判断だけでなく、第三者の意見を取り入れる必要がある。

 本論文の紹介は第57回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

2-2 発信行動が未熟

【事例】

T-2 反応への適切なフィードバックにより因果関係を成立させる

 対象は重度の知的障害を伴った脳性まひの男性,26才のBさんである。
 運動障害は重く,日常生活は全介助である。
 知的障害も重く,言葉の理解はない。
 現在,重症心身障害者のデイサービスに通っている。

 デイサービスの中で困っていることとして,食事の介助があった。
 食事中,急にBさんがバタバタと動き出したり,不快そうな声をあげたりする。
 そのため,食事を中断してしまうか,不快なまま終了してしまうというのだ。

 後日Bさんの食事場面を見せてもらった。
 介助者は言葉がけや見せることで,次に口に入れる食べ物を示している。
 しかし,Bさんがその方法で食べ物を判断することは難しいようだった。
 Bさんは食べ物が口に入ってから,味わい,それがおいしいかどうか判断しているようだ。

 また,介助者はBさんには好き嫌いがないと思っていた。
 食べ物を口に入れる順番や回数については特に気を使っておらず,「私たちが食べるような順番(=主食とおかずを交互に食べ,間に汁物やお茶)」と同様にしていた。

 Bさんがバタバタしたり,不快な表情をしたりするのは嫌いな食べ物が口に入るからではないか?
 Bさんの様子をよく確認すれば,Bさんが食べたいような方法で介助が可能ではないか?と考え,Bさんの食事を介助する時の方法を以下のように決め,試してみることにした。

 (1) 次々に食べ物を変えない。
 (2) むせる,口が動かなくなる,バタバタする,不快な表情をする場合は,その食べ物が嫌いだと判断し,食べ物を変える。
 (3) よいペースで食べ続けるものは好きな食べ物と判断し,続けて食べるようにする。
 (4) Bさんの食べ物の好みを明確にする。それをスタッフ間で共有する。
 (5) Bさんが好きだと予想できるものから食べる。嫌いと分かっていても1度はチャレンジするが,不快と思われるサインが出たら止める。

 その方法と分かりやすい食べ物の呈示の中で「受容」と「拒否」のサインを読み取り適切に対応するうち,Bさんの食べ物の好みがはっきりし,食事場面での不快な様子は随分と減った。
 このことはスタッフ間での共通事項となり,現在もこの方法で介助を継続している。

(つづく)

【引用終わり】



 障がいのある人とのかかわりでは、相手のペースを把握しそれに合わせることが大事だ。
 相手にとってわかりやすい食べ物の提示も工夫する。
 そして、介助者間でやり方を共有することである。
 こうしたことによって、障がいのある人も安心して食事できるようになる。
 食事を楽しみにするようになる。
 介助者との関係もより良いものになる。
 互いのやりとりもだんだんと明確なものにすることができる。
 一つの改善をきっかけに大きな変化をもたらすことも期待できる。
  
  (ケー)
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