機能的に使える身振りを教えることにより発信手段を与える

 05, 2016 05:00
 重複障がいのある子がなかなか発信手段を持ち合わせることができない。
 要求はクレーンによる。
 自ら身振りや絵カード等によって、発信することがきわめて少ない。
 そうした子どもに対して、本児が執着している「ガイコツ」の玩具を媒介にして、要求行動(身振り)を形成した。
 それが以下の事例である。
 
 本論文の紹介は第54回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

2-1 発信行動に受信者が勝手に意味づけようとしている

B-6 受信者の関わりを改善する(先読みを防ぐ,反応を待つなど)

T-7 機能的に使える身振りを教えることにより発信手段を与える

 対象は聴覚障害を伴う自閉症の女の子,5歳のZちゃん。
 地元の幼稚園に通いながら,幾つかの相談機関に通っている。
 補聴はされていて,声に振り返ることは出来るが,話し言葉の理解は難しい。
 理解と表出の代替手段として,身振りと写真・シンボルを用いていた。

 使用して1年,それらの手段は次の活動の予告として有効になっていた。
 しかし,表現手段はクレーンと物を渡しての要求であり,身振りは絵カードを見ると自発的に出来る50個を超えていたにも関わらず,コミュニケーション手段としては使えていなかった。

 ある日,いつもの様にお気に入りの「ガイコツ」の玩具を持って,ZちゃんはSTの所に訓練に来た。
 STは試しに,その「ガイコツ」を取り上げてみた。
 始めのうちは力ずくで取り返そうとしていたが,STはなかなか返してくれそうにないのでZちゃんは泣きそうになった。
 STのことをよく見ていたので,「ガイコツ(両手の人指し指と中指を合わせて肋骨の形を表す)・ちょうだい」の身振りを促してみると,Zちゃんは模倣した。
 そこで,玩具をZちゃんに返した。
 しばらくして,また「玩具を取り上げる」→「身振りを模倣させる」→「返す」を何度か繰り返した。
 始めは嫌がっていたZちゃんも,やり取りそのものが楽しくなり,身振りの意味も理解出来たようだった。

 「ガイコツ」のやりとりはお母さんとの遊びにもなり,「ちょうだい」はおやつの場面などで使えるようになった。
 現在は他の身振りも機能的に使える生活場面を考えているところである。

(つづく)

【引用終わり】



 本児は「ガイコツ」の玩具に対する要求がきわめて強い。
 それをきっかけに「ちょうだい」という身振りを発信するようになった。
 それがおやつの場面でも広がってきている。
 STとの間だけでなく、母親との間でも成立するようになった。
 限られた場面、限られた人間、限られた物ばかりでなくなってきている。
 今まで自ら発信することが限られていた。
 それが多くの人にとっても、わかりやすい身振り(ちょうだい)を発するようになった。
 互いのやりとりがいろんな人と成立することができるということである。
 初歩的とはいえ、発信行動が身に付いたのである。
  
  (ケー)
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