食事における好き嫌いを見出す

 02, 2016 05:00
 全介助の重度障がいのあるBさんに対して、食事介助に苦労していた。
 食事中に急に動き出したり、不快な声をあげたりする。
 その結果、食事を続けることができず止めざるを得なかったりする。
 それはなぜか。
 よくよく観察分析することで、問題解決を図った事例である。
 
 本論文の紹介は第51回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

2-1 発信行動に受信者が勝手に意味づけようとしている

B-6 受信者の関わりを改善する(先読みを防ぐ,反応を待つなど)

T-2 反応への適切なフィードバックにより因果関係を成立させる

 対象は重度の知的障害を伴った脳性まひの男性,26才のBさんである。
 運動障害は重く,日常生活は全介助である。
 知的障害も重く,言葉の理解はない。
 現在,重症心身障害者のデイサービスに通っている。

 デイサービスの中で困っていることとして,食事の介助があった。
 食事中,急にBさんがバタバタと動き出したり,不快そうな声をあげたりする。
 そのため,食事を中断してしまうか,不快なまま終了してしまうというのだ。

 後日Bさんの食事場面を見せてもらった。
 介助者は言葉がけや見せることで,次に口に入れる食べ物を示している。
 しかし,Bさんがその方法で食べ物を判断することは難しいようだった。
 Bさんは食べ物が口に入ってから,味わい,それがおいしいかどうか判断しているようだ。

 また,介助者はBさんには好き嫌いがないと思っていた。
 食べ物を口に入れる順番や回数については特に気を使っておらず,「私たちが食べるような順番(=主食とおかずを交互に食べ,間に汁物やお茶)」と同様にしていた。

 Bさんがバタバタしたり,不快な表情をしたりするのは嫌いな食べ物が口に入るからではないか?
 Bさんの様子をよく確認すれば,Bさんが食べたいような方法で介助が可能ではないか?と考え,Bさんの食事を介助する時の方法を以下のように決め,試してみることにした。

 (1) 次々に食べ物を変えない。
 (2) むせる,口が動かなくなる,バタバタする,不快な表情をする場合は,その食べ物が嫌いだと判断し,食べ物を変える。
 (3) よいペースで食べ続けるものは好きな食べ物と判断し,続けて食べるようにする。
 (4) Bさんの食べ物の好みを明確にする。それをスタッフ間で共有する。
 (5) Bさんが好きだと予想できるものから食べる。嫌いと分かっていても1度はチャレンジするが,不快と思われるサインが出たら止める。

 その方法と分かりやすい食べ物の呈示の中で「受容」と「拒否」のサインを読み取り適切に対応するうち,Bさんの食べ物の好みがはっきりし,食事場面での不快な様子は随分と減った。
 このことはスタッフ間での共通事項となり,現在もこの方法で介助を継続している。

(つづく)

【引用終わり】



 食事介助もひとつのコミュニケーションといっていい。
 障がいのある人と、介助者との関係づくりである。
 スムーズに楽しく食事できるようにすることだ。
 食事を拒むなどの問題が生じたら、それはなぜかを問う必要がある。
 問題の本質を見出さなければならない。
 上記の例は、好き嫌いがあることに気づいていなかったという仮説に基づいて、食事介助のあり方を改善した。
 それによって、Bさんの好みを明らかにすることができた。
 Bさんとの食事介助をスムーズ行うことが可能になった。
 これを介助者が共有することによって、Bさんといろいろな介助者とも関係を広げることができた。
 Bさんは食事を楽しみ、いろんな介助者との関係もより良いものになっていくはずである。
  
  (ケー)
関連記事

COMMENT 0

WHAT'S NEW?