シンボルシート利用で本人の意思伝達が可能に

 19, 2016 05:00
 以下の引用は、重度の重複障がい児に対して、シンボルシートを用いたコミュニケーションの形成を行った事例である。
 新幹線やバスといった乗り物が大好きな本児にとって、シンボルシートを提示するとその要求をかなえることができる。
 そうしたやりとりが可能になった。
 本児の要求が明確に家族に伝えることができるようになった。
 家族にとっても、本児が何をしたいかはっきり理解できるようになった。
 より良いコミュニケーションが形成された。 

 本論文の紹介は第38回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

1-4 発信手段を持たない

 発信手段がなければ訴えることができないのは当たり前のことである。
 外国に行って言葉が分からないときには,あまりコミュニケーションをとりたくない人が多いはずである。
 訴える手段を獲得すると訴える行動も増えてくる。

【事例】

T-13 シンボルシートの利用により本人の意思伝達が可能になる

 対象はfくん。
 肢体不自由児の養護学校に通う中学部の1年生。
 脳性まひ(痙直型四肢まひ),高度難聴,知的障害とたくさんの障害を重複している。
 安定した座位保持装置に座れば,上肢を使用することが可能で,本をめくったり,複数のスイッチのついた玩具で遊んだりすることが出来る。

 補聴器はつけているが,話ことばの理解は全くない。
 しかし状況の理解はよく,小学部3年の時から次の活動の見通しをつけてもらうための「写真」を理解の補助手段として使用し始めた。

 fくんからの意図的なコミュニケーションは,予告の「写真」を見せると首を振って「拒否」するような場面から現れた。
 そのうち好きなビデオをかけてもらうために母親にさし出すエピソードや,大好きな新幹線を見に行きたいために,新幹線が書いてある絵本を父親にさし出すような場面が6年生頃から確認された。

 もう少し詳細にfくんに伝え,彼からの自発的なコミュニケーションを補償するために中学部の1年になってから積極的にシンボル(PCS:Picture Communication Symbol)を導入するようになった。
 まず理解面の補助手段として家庭での日課を伝えるために使われた。
 またより細かな内容を伝えるため,理解補助用にシンボルシートを作成した。
 シンボルの理解も進んでいるので,fくんが発信するためのシンボルシートを続いて作成した。

 最近では,退屈な休みの日にシンボルシートの「○○百貨店」のロゴを示して「行きたい」と要求するようになった。
 彼の目的は買い物ではなく,百貨店の下にあるバスターミナルである。
 乗り物が大好きなfくんは,バスターミナルもとても好きな場所だ。
 「○○百貨店」の1階は大きなバスターミナルであることをよく知っているのだ。

(つづく)

【引用終わり】



 本児にとっては、発語によるコミュニケーションは困難である。
 四肢まひ、難聴、知的障がいといった重複障がいがあるからだ。
 発語の代替手段としてシンボルシートを導入した。
 日常生活の中で要求度の高いものに関するシンボルシートを作成して、より良いコミュニケーションを形成した事例である。
 学校場面だけでなく、家庭生活においてもかなりうまくいっている事例に違いない。
 
  (ケー)
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