機能的に使える身振りを教える

 03, 2016 05:00
 コミュニケーションにおける受信(理解)はある程度身に付いていても、発信(表現)が不十分という障がい児は多い。
 以下は、そうした子に対する、やりとりをいかに学ばせたかの事例である。
 ある程度、要求度の高いものがあると学習効果が上がるのは確かだ。

 本論文の紹介は第22回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

1-4 発信手段を持たない

 発信手段がなければ訴えることができないのは当たり前のことである。
 外国に行って言葉が分からないときには,あまりコミュニケーションをとりたくない人が多いはずである。
 訴える手段を獲得すると訴える行動も増えてくる。

A-1 ノンテク・コミュニケーション技法を利用する

【事例】

T-7 機能的に使える身振りを教えることにより発信手段を与える

 対象は聴覚障害を伴う自閉症の女の子,5歳のZちゃん。
 地元の幼稚園に通いながら,幾つかの相談機関に通っている。
 補聴はされていて,声に振り返ることは出来るが,話し言葉の理解は難しい。
 理解と表出の代替手段として,身振りと写真・シンボルを用いていた。

 使用して1年,それらの手段は次の活動の予告として有効になっていた。
 しかし,表現手段はクレーンと物を渡しての要求であり,身振りは絵カードを見ると自発的に出来る50個を超えていたにも関わらず,コミュニケーション手段としては使えていなかった。

 ある日,いつもの様にお気に入りの「ガイコツ」の玩具を持って,ZちゃんはSTの所に訓練に来た。
 STは試しに,その「ガイコツ」を取り上げてみた。
 始めのうちは力ずくで取り返そうとしていたが,STはなかなか返してくれそうにないのでZちゃんは泣きそうになった。
 STのことをよく見ていたので,「ガイコツ(両手の人指し指と中指を合わせて肋骨の形を表す)・ちょうだい」の身振りを促してみると,Zちゃんは模倣した。
 そこで,玩具をZちゃんに返した。
 しばらくして,また「玩具を取り上げる」→「身振りを模倣させる」→「返す」を何度か繰り返した。
 始めは嫌がっていたZちゃんも,やり取りそのものが楽しくなり,身振りの意味も理解出来たようだった。

 「ガイコツ」のやりとりはお母さんとの遊びにもなり,「ちょうだい」はおやつの場面などで使えるようになった。
 現在は他の身振りも機能的に使える生活場面を考えているところである。

(つづく)

【引用終わり】



 自閉症の子はこだわりが強い。
 それも決まったものを常に持ち歩く子も多い。
 上記の例は、「ガイコツ」のおもちゃをうまく利用することができた例である。
 うまくやりとりを成立することができた。
 子ども側からの強い要求や発信があったからこそ、うまくいった。
 重度の障がいのある子は、こうした要求や発信が微弱である。
 微弱であっても、それを注意深く見出すのがプロとしての力量だ。
 
 (ケー)
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