好き嫌いを明らかにする食事介助

 18, 2016 05:00
 食事の介助でも、被介助者の様子をよく観察して、食事がスムーズにいくように工夫した事例が以下のとおりである。
 重度の障がいのある人にも、食事を拒否するのは、それなりの理由がある。
 嫌いなものであれば、拒否するのは当然。
 拒否されるようであれば、今までのやり方に問題がある。
 そうしたことを踏まえた対応をすべきなのである。

 本論文の紹介は第6回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

1-1 コミュニケーションのルールが理解できていない(因果関係が不成立)

 働きかけてもほとんど反応が無い,あるいは,全く理解できない反応が返ってくる場合,自分がこうすれば相手はこうなるという関係(因果関係と呼ぶ)が理解できていないことがある。
 この場合,その関係が理解できるように関わりを続けていく必要があるが,多くの場合,日常の関わり方がまずいために,その関係の理解が遅れている。
 そのためにも障害に応じた適切な関わりを通して,因果関係の成立を促す必要がある。

B-2 理解出来るように働きかける

【事例】

T-2 反応への適切なフィードバックにより因果関係を成立させる

 対象は重度の知的障害を伴った脳性まひの男性,26才のBさんである。
 運動障害は重く,日常生活は全介助である。
 知的障害も重く,言葉の理解はない。
 現在,重症心身障害者のデイサービスに通っている。

 デイサービスの中で困っていることとして,食事の介助があった。
 食事中,急にBさんがバタバタと動き出したり,不快そうな声をあげたりする。
 そのため,食事を中断してしまうか,不快なまま終了してしまうというのだ。

 後日Bさんの食事場面を見せてもらった。
 介助者は言葉がけや見せることで,次に口に入れる食べ物を示している。
 しかし,Bさんがその方法で食べ物を判断することは難しいようだった。
 Bさんは食べ物が口に入ってから,味わい,それがおいしいかどうか判断しているようだ。

 また,介助者はBさんには好き嫌いがないと思っていた。
 食べ物を口に入れる順番や回数については特に気を使っておらず,「私たちが食べるような順番(=主食とおかずを交互に食べ,間に汁物やお茶)」と同様にしていた。

 Bさんがバタバタしたり,不快な表情をしたりするのは嫌いな食べ物が口に入るからではないか?
 Bさんの様子をよく確認すれば,Bさんが食べたいような方法で介助が可能ではないか?と考え,Bさんの食事を介助する時の方法を以下のように決め,試してみることにした。

 (1) 次々に食べ物を変えない。
 (2) むせる,口が動かなくなる,バタバタする,不快な表情をする場合は,その食べ物が嫌いだと判断し,食べ物を変える。
 (3) よいペースで食べ続けるものは好きな食べ物と判断し,続けて食べるようにする。
 (4) Bさんの食べ物の好みを明確にする。それをスタッフ間で共有する。
 (5) Bさんが好きだと予想できるものから食べる。嫌いと分かっていても1度はチャレンジするが,不快と思われるサインが出たら止める。

 その方法と分かりやすい食べ物の呈示の中で「受容」と「拒否」のサインを読み取り適切に対応するうち,Bさんの食べ物の好みがはっきりし,食事場面での不快な様子は随分と減った。
 このことはスタッフ間での共通事項となり,現在もこの方法で介助を継続している。

(つづく)

【引用終わり】



 以上、重度の障がい者に対する示唆に富む食事介助のあり方と言っていい。
 今まで、嫌がって食事を中断したりすることもあった。
 こうしたことが続いていた結果、本人も、介助者も食事場面はひょっとすると緊張していた可能性がある。
 それが、嫌いなものを避けるようにする手立てによって、問題を回避するようになった。
 しっかりした問題把握をして、今までと異なる対応により問題が生じなくなった。
 大事な食事が安定して行えるようになったことは、本人のQOLの向上につながった。
 さらに、介助者にとってもより良い介助の工夫向上につながったはずだ。
 
 (ケー)
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