コミュニケーションのルールが理解できていない場合の支援

 16, 2016 05:12
重度重複障がい者の自発行動をいかに引き出すか。
 適切な関わり方とはどんなか多くの課題がある。
 反応そのものが少なく、一定の反応を見出すことさえ難しい。
 ごく限られた動きでも、反応できるおもちゃによって自発的な動きを引き出す試みが以下の実践である。

 本論文の紹介は第4回目である。 



【引用はじめ】

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy/article/self_determination/report02.html
第1部 障害のある人の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル
     主任研究者 中邑賢龍(香川大学)
     分担研究者 中野泰志(慶應義塾大学)
              坂井聡(金沢大学大学院)
              岩根章夫(姫路市総合福祉通園センター)
              中澤惠江(国立特殊教育総合研究所)

自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル

1-1 コミュニケーションのルールが理解できていない(因果関係が不成立)

 働きかけてもほとんど反応が無い,あるいは,全く理解できない反応が返ってくる場合,自分がこうすれば相手はこうなるという関係(因果関係と呼ぶ)が理解できていないことがある。
 この場合,その関係が理解できるように関わりを続けていく必要があるが,多くの場合,日常の関わり方がまずいために,その関係の理解が遅れている。
 そのためにも障害に応じた適切な関わりを通して,因果関係の成立を促す必要がある。

B-1 動きに対し適切なフィードバックを行う(スイッチを利用したおもちゃ遊び支援)

 乳児が自分の手を不思議そうに見つめることがある。
 これは自分の手を自分のものだとはっきり認識していない状態である。
 しかし,そのうちに手を動かすと物にふれる感じがする,光がさえぎられて明るさが変化する,音がするということに気づきはじめる。
 このことを通じて,自分の手を認識し,自分と外界との関係(因果関係の成立)を理解していく。

 一方,生まれつき重度運動障害があり,随意的に動かせる部位が限られている人の場合,自分が体を動かすと周囲が変化するという関係に気づかないでいることがある。
 僅かに体を動かせても,ほとんどの外界に変化は生じず,自分の体を認識したり,因果関係を理解できないまま成長していく。
 それどころか,その失敗経験により,「自分は何をやってもだめだ」と感じ,意欲が低下しているのではないかと考えられている。
 これを学習性無力感(Learned Helplessness)と呼ぶ。
 この状態では自発的発信が起こりにくいのもうなづける。

 そこで,重度運動障害があっても僅かに残された身体機能を引き出し,その動きをフィードバックするおもちゃ遊び補助システムが考えられている。

 乾電池アダプタをおもちゃの電池ボックスに挿入し,僅かな残存機能で作動させることのできるスイッチやセンサーと接続すれば,体の動きでおもちゃを動かすことが出来るようになる。
 このシステムの利用により,自分の体の動きで周囲に変化が生じることを理解できるようになるはずである。

 このシステム利用で重要な点は,どんなスイッチやセンサーで何のおもちゃを動かすかという点である。
 詳しくは参考文献をご覧頂きたい。

 こうやって因果関係に気づくとコミュニケーションがすぐに成立するわけではないが,コミュニケーションの成立には不可欠の下地が出来たと言える。

【参考文献】
•福島勇・塩田佳子 1998 出来ることを活かすシンプルテクノロジー こころリソースブック出版会

(つづく)

【引用終わり】



 以上のような実践は、特別支援学校の訪問教育などで行われて成果をあげている。
 重度心身障がい児の自発的動きを見出そうという努力である。
 他と比べたら成果と言われるほどのものかと指摘されかねない。
 しかし、ほんのわずかな動きや変化に着目した教育が日々行われている。
 こうした実践こそ、日本教育の基礎を支えていると思うのだが。
 大げさな言い方かな。
 最近の衝撃的事件、「津久井やまゆり園」における19人の重度障がい者が殺された。
 元職員であった犯人は、その正当性を主張している。
 重度障がい者は不幸をつくるというのだ。
 この言いぐさにはあきれるばかり。
 ただ、この犯人みたいに殺人までは行わなくても、こう考えている人は少なくない。
 重度障がい者に対する理解をいかに図るか大きな課題である。
 
 (ケー)
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