狂言に登場する障がい者

 12, 2015 05:00
 狂言の中に障がい者を取り上げているものが少なくない。
 その代表が「三人片輪」(さんにんかたわ)である。
 今でいう視覚障がい、肢体不自由、言語障がいになりすました三人の博打打が仕事にありついた。
 その三人が悪だくみをするのだが、にわか障がい者なので、結局は正体がばれてしまうという話だ。

 これに関して、花田春兆氏は以下のように述べる。
 花田春兆氏の引用は第12回目である。、 



【引用はじめ】

花田春兆(国際障害者年日本推進協議会副代表)
日本の障害者の歴史―現代の視点から―

「リハビリテーション研究」1987年3月(第54号)2頁~8頁 (財)日本障害者リハビリテーション協会発行
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/rehab/r054/r054_002.html

A 近代以前

4.戦国時代

 聴力・言語障害者となると、障害者の中でも特に歴史に現れてきません。
 辛うじて拾うとすれば 「古事記」の中とか、「古事記」が生まれた時代の皇族関係者の中に、それらしき人影が見られる程度でしょう。
 ただ、この室町時代から戦国時代へかけて盛んに催されるようになった舞台芸能の“狂言”には、視力・肢体などの他の障害者とともに聴力障害者が登場します。
 その代表とするにはどうも不適当なのですが、「三人片輪」というのがあります。

  “仔細あって片輪者を多勢抱えよう”という人の許へ、“唖(おし)・座頭・躄(いざり)”の3人がやって来て雇われたのはよいのですが、主人の留守に酒に酔ってしまい、主人が帰ってみると3人の障害が以前とそれぞれに違っていて、3人ともにせ者だったことがバレてしまう……というお話です。

 現代風に言うと、雇用促進の実践者を悪用したような話ですが、にせ者が現れるくらいですから、本物がいて抱えられていた事実があったと見ても間違いはないでしょう。

 特に狂言には、座頭物として分類の1部門なすくらいに、盲人は多く登場して来ます。

 座頭の2人連れが河を渡ろうとして通りかかったいたずら者に利用されてしまったり、女房を盗まれたあげく猿にひっ掻かれたりなど、どれも芳しい話ではありません。
 しかし、障害者を特になぶり者にしたのではなく大名とか僧侶とか当時の権力者たちをなぶっているのですから、その点では“平等”なわけですし、そうした狂言があることは、座頭仲間だけでの旅行(巡業)がされていたり、座頭も立派に結婚をしていたということを証拠立てているのです。

 なお戦国の内戦に当って、攻撃する側の軍隊の道案内の役に聾唖者が好んで使われたという話が伝わっています。
 他人と喋らないから秘密が保たれる点を買われたらしいのですが、どうも気分のよい話ではありません。

【引用おわり】



 視覚障がいを扱った狂言には次のようなものがある。
◯ 清水座頭 視覚障がい者どうしの結婚をあつかった話
◯ 丼かっちり(どぶかっちり) 座頭が川を渡る話
◯ 不聞座頭(きかずざとう) 不見不聞(みずきかず) 視覚障がい者と聴覚障がい者が留守番をする話

 笑いを目的としたストーリとはいえ、今からみれば、視覚障がい者をなぶり者にしていると言わざるを得ない。

(ケー)
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